薄場事務所 永井 友美子
2021年2月19日
表題部所有者不明土地問題
判例紹介:個別クレジット契約のクーリング・オフが有効とされた事例
コラム:~春の味覚~
ご挨拶
アメリカでは大統領選挙が終わり、バイデン新政権が誕生しました。これからどのような政策がでるのかはわかりませんが、コロナ対策は最重要課題として取り組まれるようです。
トランプ前政権下で行った財政政策により、コロナ禍にもかかわらず、アメリカのGDPは大分戻ってきているということです。さらにワクチン接種が広まれば、アメリカ経済は急速に回復するかもしれません。日本もワクチン接種が始まります。経済もそれに伴い、回復することを願うばかりです。
このようなコロナ禍におきまして、司法書士の業務もいろいろなところで影響が出ております。特に海外に居住する方の手続きは難しい面が出てきております。相続で相続人の一人が海外にいる場合、日本大使館やその国の公証役場で取得する書類があるのですが、ロックダウンで外出禁止命令が出ると、大使館や公証役場に取りに行くことができませんし、取りに行けたとしても、その書類を郵送するのに、船便で数カ月かかったりします。また、郵便物を送ることのできない国もあります。
コロナ禍の前であれば何ら問題なくできた手続きができなくなると、ご依頼者様は不安になります。早く正常な状態に戻ってほしいと思います。
また、少しずつではありますが、多重債務のご相談がでてきております。多重債務の問題は解決できる問題なので、お近くにお困りの方がいらっしゃいましたら、ご紹介ください。
大変な時期ではございますが、社会の公器として、皆様のお力になれればと思っておりますので、ご不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。
(代表社員 井上 勉)
表題部所有者不明土地問題
前号より、所有者が直ちに判明しない、又は判明しても所有者に連絡がつかない土地、いわゆる「所有者不明土地」が生じる要因の一つである「表題部所有者不明土地」の問題と、その問題を解消するための法律(表題部所有者不明土地の登記及び管理の適正化に関する法律以下「法」といいます。)が施行されたことについてご紹介しました。
今回は、法により新しく創設された制度の一部について、ご説明します。
1. 所有者の探索の制度
(1)登記官の調査権限
登記官は、表題部所有者不明土地について、土地の利用の現況その他の事情を考慮して、表題部所有者不明土地の登記の適正化を図る必要があると認めるときは、職権で、所有者の探索を行います(法3条1項)。登記官が、探索を行おうとするときは、あらかじめ、その旨を公告しなければなりません(法3条2項)。
(2)登記官の調査権限
登記官は、所有者等の探索のため、
表題部所有者不明土地又はその周辺の地域に所在する土地の実地調査を行うこと
表題部所有者不明土地の関係者から知っている事実を聴取し又は資料の提出を求めること
その他必要な調査をすること
などが認められます(法5条)。
また、地方公共団体の長その他の者に対し、表題部所有者不明土地の所有者等に関する情報の提供を求めることができます(法8条)。
(3)所有者等探索委員による調査
登記官の調査を補充し、所有者等の探索に必要な調査を行い、登記官に意見を提出する所有
者等探索委員の制度が創設されました(法9条1項)。所有者等探索委員は、必要な知識及び
経験を有する者から、法務局または地方法務局の長が任命します(法9条2項)。
2. 探索の結果に基づく表題部所有者の登記
(1)所有者等の特定
登記官は、探索により得られた情報の内容その他の事情を総合的に考慮して、表題部所有者として登記すべき者等について判断をします(法14条1項)。
(2)表題部所有者の登記
登記官は、所有者等の特定をしたときは、表題部所有者不明土地について、職権で、遅滞なく、表題部所有者の登記を抹消した上、(ア)表題部所有者として登記すべき者がいるときは、その者の氏名又は名称及び住所を、(イ)表題部所有者として登記すべき者がいないときは、その旨と理由を登記します(15条)。
次回も引き続き、法により新しく創設された制度(所有者等特定不能土地の管理)についてご説明したいと思います。
判例紹介
個別クレジット契約のクーリング・オフが有効とされた事例
名古屋簡易裁判所 平成30年01月29日判決
事案の概要
Xは、Aとの間で、自宅への訪問販売により、2015年10月上旬、Aが販売する子ども用学習教材の売買契約を締結した。売買代金約90万円については、個別クレジット契約を利用する内容であった。個別クレジット契約は、クレジット会社であるYとの間で、立替手数料を含む総額約114万円の内容であった。Xは、契約に基づいて約26万円を支払ったものの、Aに対して2016年8月下旬付けの内容証明郵便によりクーリング・オフの通知を行った。Yには同年10月下旬付けの本件訴状の提出によりクーリング・オフを行った。本件訴訟は、Yに対して支払った合計約26万円を返還するよう求め提訴に及んだ事件である。本件訴訟で争点となったのは、売買契約の対象となった商品の内容とXがAから受領した売買契約書と個別クレジット契約書の記載内容が特定商取引法および割賦販売法に定める記載事項を満たす内容の法定書面といえるかどうか、法定記載事項を満たしていない場合にはクーリング・オフ期間は進行しないのかという点であった。
裁判所の判断
XとAとの間の本件学習教材購入契約の対象は「学習教材中1~高3、ハードディスク小5~6 算数中1~中3 5ケ目高1~高3 3ケ目」、(中略)、月一訪問サポート(習慣化出来るまで)」の「中学1年生から高校3年生までの6年分」の学習教材と認めることができるのに対し、AからXに対し交付された本件教材売買契約書および本件クレジット契約書の商品名記載欄には「学習教材(中1~中3 5ケ目ハードディスク)」としか記載されていないことからすると、そもそも現実にXが購入した対象商品と法定書面に記載された対象商品とが一致しておらず、法定書面として不十分である。また、本件教材売買契約書および本件クレジット契約書の商品名記載欄の「学習教材(中1~中3 5ケ目ハードディスク)」の記載のみによっては「高1ないし高3」の学習教材のほか「役務の提供」が含まれているか否かも客観的に認識することはできない。
Xは、適法な法定書面の交付を受けたとはいえず、本件教材売買契約書および本件クレジット契約書のクーリング・オフ期間は進行することがなく、本件教材売買契約について特定商取引法5条所定の法定書面を受領した日から起算して8日を経過したといえず、また、本件クレジット契約について、割賦販売法35条の3の10の法定書面を受領した日から8日を経過したともいえない、として、XがA及びYに対し行ったクーリング・オフの意思表示はいずれも有効であると判断し、Yに対して既払金の返還を命じた。
コメント
本件は、クーリング・オフ期間の起算日である法定書面の交付の有無、つまり消費者が契約締結時に受け取った個別クレジット契約の契約書面の記載からみて、割賦販売法で定める契約書面に該当しないとして、契約から約1年経過していても、クーリング・オフ期間は進行せず、契約の解除を認めたものです。割賦販売法35条の3の10では、クーリング・オフができることが記載された法定記載事項を満たした書面を受領したときから8日を経過するまでは、クーリング・オフによる契約の申込みの撤回ができると規定されています。本事例においては、法定記載事項の要件を欠いていることから、法定書面を受領したとはいないとして、クーリング・オフによる申込みの撤回を認めたものであり、当然の判断と言えます。
コラム
~春の味覚~
春の味覚と聞いて何を思い出すか。タケノコ? 山菜? 個人的にはいちごです。
1月末頃から、いちごフェア、バイキングなど魅惑の言葉を目にするようになりますが、今のいちごは粒も大きくて練乳不要な甘さのものが増えましたね。
1 粒1 粒ネットに包まれて売られる高級いちごや白いイチゴがあるのには驚きですが、大人から子供まで色々な姿で楽しませてくれるイチゴ。旬の美味しい物を食べてパワーを頂き、コロナも乗り越えていきたいものですね。
薄場事務所 永井 友美子
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