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法エールV ol.202

清水事務所 大島 文恵

2025年11月20日

マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法 / 判例紹介:名誉毀損と公共の利害に関する事実(公共性)/ コラム:~長部田海床路の旅~




ご挨拶


退職代行サービスを運営する会社および関連法律事務所等が、弁護士法違反の疑いで警視庁による家宅捜索を受けました。

退職代行サービスは、労働者が、会社を辞めたいと思っても、精神的に辞めづらいとか、退職の意向を会社に伝えることができないといった場合に、労働者に代わって会社に退職の意向を伝えてくれるというサービスで、社会的にニーズは高まっています。

しかし、退職代行サービスに対しては、退職代行サービスを行う業者が、報酬を得て依頼者の代理として会社と有給休暇や残業代・慰謝料の交渉を行うなど、弁護士や司法書士等(司法書士は、訴額が140万円以下の簡易裁判所管轄の案件のみ)の資格を有する者しかできない、法律的紛争に関する交渉・代理・あっせんを行っている場合があるということです。

弁護士法第72条では、「弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で、訴訟事件・非訟事件・審査請求等、その他一般の法律事件に関して代理、仲裁、和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらをあっせんすることを業とすることができない」と定めています。そのため、退職代行サービスが「退職の意思を伝えるだけ」にとどまるのではなく、例えば「未払い残業代を請求します」「慰謝料計算できます」といった行為を報酬を得て行ったり、特定の弁護士への紹介を斡旋し紹介料を受け取っていたとすれば、同法違反(非弁行為・非弁提携)に該当する可能性があります。

退職代行サービスに限らず、登録された国家資格者を有しないのではないかと思われる会社等が、登録された国家資格者がこれまで行ってきた業務に関して、相談を受けたり、手続を行いますという広告を見る機会が増えてきました。その会社に登録された国家資格者がおり、その者が手続きを行うのであればいいのですが、そうでない場合は、弁護士法等に反する可能性があります。

広告をみて、法律関係の紛争のご相談をされる際には、安易に相談されるのではなく、相談相手が、登録された国家資格者である弁護士や司法書士であるかどうかを確認されて、ご相談されることをお勧めいたします。

それでは、今月の法エールもよろしくお願い致します。

(代表社員 井上 勉)




マンションの管理・再生の円滑化等のための改正法


前回は、「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律の一部を改正する法律」が成立したことに伴い、建物の区分所有等に関する法律(以下、改正前の同法を「旧法」といい、改正後の同法を「新法」という。)の、新法の改正内容のうち、「管理の円滑化等」の概要について説明しました。

今回は、「管理の円滑化等」の具体的な内容について説明します。


1.集会決議の円滑化


定期的に実施することが予定されている外壁や屋上防水工事など、マンションの所有権の処分を伴わない工事をする場合で、全区分所有者が5名の場合の集会決議について説明します(普通決議、過半数の賛成が必要な場合)。

5名のうち、1名が決議に無関心であり集会に出席しない者、1名が所在等不明者、出席者3名のうち1名が決議に反対した場合、旧法では、下記図(1)のとおり、全区分所有者5名を分母とし、賛成が2名であるため、過半数を満たさず決議は否決されます。これに対して、新法の場合には、下記図(2)のとおり、決議無関心者及び所在等不明者を除外して分母を3名とし、賛成が2名であるため、過半数を満たし決議は可決されます。

このように、決議要件が柔軟化され、区分所有建物の円滑な管理が期待されます。


2.マンション等に特化した財産管理制度


マンションの所有者による適切な管理がされないことで周囲に危険が及ぶ恐れがある場合や、所在等不明区分所有者の専有部分が適切に管理されずに、建物の管理に支障が出る場合に、裁判所が選任した管理人に管理させる制度が創設されました。


(1)管理不全専有部分管理制度

区分所有者の専有部分において、ゴミが処分されず集積されていたり、専有部分の配管が腐食したまま放置されている場合など


(2)管理不全共有部分管理制度共有部分である外壁が剥落する恐れがある場合や、廊下やテラスに危険物や悪臭を放つゴミが放置されている場合など


(3)所有者不明専有部分管理制度区分所有者が所在不明の場合3.新法に基づく財産管理制度の申立について利害関係人(区分所有者、近隣住民など、個別の事案に応じて裁判所により判断されます)から、

マンションの所在地を管轄する地方裁判所に申立てます。選任される管理人は、弁護士や司法書士が想定されています。


4.選任された管理人の権限について


上記2.の(1)から(3)のうち、(1)と(2)の場合の管理人の権限として、専有部分及び共有部分の適切な管理を実現するため、管理命令の対象となった専有部分・共有部分及び管理命令の効力が及ぶ動産などの管理・処分により、管理人が得た財産の管理・処分をすることが可能になりました。

ただし、保存行為に限られ、専有部分・共有部分の性質を変えない利用改良行為の範囲を超える場合には、裁判所の許可が必要となります。また、専有部分・共有部分の処分には、区分所有者の同意が必要となります。

(3)の場合、管理処分権は管理人に帰属します。裁判所の許可があれば、区分所有者の同意なく、専有部分の処分が可能となります。

以上、新法の「管理の円滑化等」の具体的内容を説明しました。次回は、「再生の円滑化等」について説明します。



判例紹介



名誉毀損と公共の利害に関する事実(公共性)

(最高裁判所昭和56年4月16日小法廷判決)



【事実の概要】


本件は、月刊誌「月刊ペン」の編集局長であった被告人が、宗教法人Sの教義やあり方を批判するに際し、会長Iの私的行動である女性関係を取り上げる記事を掲載し、約3万部を販売・頒布した。

これによって、法人S、会長I及びその醜聞の相手方とされた女性らの名誉を毀損したとして逮捕・起訴された。

第1審、控訴審ともに、記事の内容が「公共の利害に関する事実」(現行刑法230条の2第1項、以下刑法の法令名省略) に該当しないとして名誉毀損罪の成立を認めたため、被告人が上告した。


【判旨】


1 私人の私生活上の行状も「公共の利害に関する事実」となり得る。

私人の私生活上の行状であっても、その携わる社会的活動の性質及びこれを通じて社会に及ぼす影響力の程度などのいかんによっては、その社会的活動に対する批判ないし評価の一資料として、230条の2第1項にいう「公共の利害に関する事実」に該当する場合がある。

本件では、摘示した事実の中に、私生活上の行状、とりわけ一般的には公表を憚るような異性関係の醜聞に属するものも含まれているが、会長は多数の信徒を擁する宗教団体のほぼ絶対的な指導者であり、公私を問わずその言動が社会一般にも少なからぬ影響を及ぼしていたこと、相手方女性らも有力な会員であったことから、その人物らの私生活上の行状は、「公共の利害に関する事実」にあたると解するのが相当である。

2 「公共の利害に関する事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らし客観的に判断されるべきものであり、これを摘示する際の表現方法や事実調査の程度などは、同条にいわゆる公益目的の有無の認定等に関して考慮されるべきことがらであって、摘示された事実が「公共の利害に関する事実」にあたるか否かの判断を左右するものではないと解するのが相当である。


【コメント】


1 230条の2第1項は、摘示事実が「公共の利害に関する」ものであること、目的が「公益を図る」ものであり、「真実であることの証明」があることを要件に、名誉毀損につき免責するとしています。

本判決は、一般的に公表をはばかるような異性関係の醜聞に属する具体的事実につき、私生活上の行状であっても、「公共利害関係性」を肯定した点は、重要です。

また、従来の下級審判例で採用していた表現方法等の諸事情を総合して摘示事実の公共利害関係性を判断するという手法を否定し、「公共の利害に関する事実」にあたるか否かは、摘示された事実自体の内容・性質に照らし客観的に判断されるべきとした点にも意義があります。


2 最高裁判所は以上のように述べて、原判決及び第1審判決を破棄し、本件を第1審裁判所へ差し戻しました。これを受けた差戻第1審、差戻控訴審は、摘示事実の公共利害関係性及び公益目的は肯定しましたが、真実性の証明はなく、真実性の誤信につき相当の理由もなかったものとして、名誉毀損罪につき有罪としました。しかし、再度の上告中に被告人Iが死亡したため、公訴棄却(刑事訴訟法339条第1項第4号)として本件は終結しています。


3 230条の2の趣旨は、個人の名誉・プライバシーと表現自由の調和・均衡を図ることにありますが、日常的なSNS等によるタレント、芸能人等に対する私行に絡んだ誹謗中傷的な投稿に関し、この調和・均衡をどこに求めるかは、相当難しい問題です。



コラム


~長部田海床路の旅~


先日、熊本県宇土市の「長部田海床路(ながたべかいしょうろ) 」を訪れました。有明海

の干満差で現れたり沈んだりする不思議な道路で、ちょうど潮が引き始めた時間帯だっ

たため、海の中から少しずつ道が姿を現していく様子を見ることができました。青い空とき

らめく海面、そして遠くに伸びる電柱の列がつくり出す風景は、幻想的で心を奪われまし

た。潮風に吹かれながらゆっくりと散歩していると、自然と深呼吸したくなるような清々しさ

を感じます。近くのお土産物屋さんに立ち寄ったり、「O N E P IE C E 」のジンベエ像と一緒に

写真を撮りました。私たちがジンベエと並んで撮る一枚は、この旅の記念になりました。穏

やかな秋の日差しの中、心に残る時間を過ごしました。

(清水事務所 大島 文恵)




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