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法エールVol.184

健軍事務所司法書士 山﨑順子

2024年5月20日

相続登記の義務化 判例紹介 司法書士日記



ご挨拶


新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し、今年の5月8日で1年が経過しました。5類移行後初めてのゴールデンウィークということもあり、今年は、旅行に行かれたり、遊びで遠方に行かれる方が多いのではと思っていました。

しかし、旅行会社の日本旅行によると、昨年はコロナ禍での旅行自粛の反動から、5類移行に先立ち国内旅行が活況となったが、今年は国内旅行の予約件数が前年比で約3割減少したということでした。今年はインバウンドが増え、旅行代金の高騰や観光地の混雑への懸念から、自宅で過ごす人が増えたのではないかということです。

円安の影響もあり、海外の方からすると、日本への旅行は割安感があり、インバウンドは増加傾向ではありますが、国内ではインバウンドを見込んでのホテル代や外食費の高騰等、日本人にとって、旅行することは以前に比べるとハードルが高くなっています。特にホテル等の宿泊費は、前年比で27.7%も値上がりしています。

旅行以外にも、食料品や外食代の値上げ等で、国民の消費マインドは下降気味です。インフレが進行するなか、給与も同時に上がっていけるような仕組を各企業が行い、日本全体として景気が上昇していかなければなりません。6月には、所得税、住民税の定額減税が行われます。減税が行われ、所得が多くなる分、少しでも国民の消費マインドが向上し、景気が上向いていくことを願っております。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。

(代表社員井上勉)



相続登記の義務化


前回、相続登記の義務化の背景と概要をご説明しました。

今回は、申請義務の内容と相続人申告登記についてご説明いたします。


1.基本的義務


相続(遺言を含む。)により不動産の所有権(持分を含む。)を取得した相続人は、自己のために相続の開始があったことを知り、かつ、その不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務付けられました(不動産登記法(以下、「法」と略します。)第76条の2第1項)。


2.遺産分割成立時の追加的義務


前述の基本的義務とは別に、被相続人の財産を分けるための話し合いがまとまった場合(遺産分割協議が成立した場合)には、遺産分割が成立した日から3年以内にその内容を踏まえた所有権の移転の登記を申請することが義務付けられました(法第76条の2第2項、第76条の3第4項等)。

なお、後述する相続人申告登記で義務を果たすことができるのは、基本的義務のみであり、この追加的義務については、相続人申告登記では果たすことができませんので、ご注意ください。


3.相続人申告登記


遺産分割協議が難航したり、相続人が行方不明で遺産分割協議自体が難しい場合等、相続登記申請が期限内にできない場合があります。

そこで、期限内(3年以内)に相続登記の申請をすることが難しい場合に簡易に相続登記の申請義務を履行することができるようにする仕組みとして、「相続人申告登記」が新たに設けられました。

相続人申告登記は、必要な戸籍の証明書(戸除籍謄本等)等を添付して、自らが登記記録上の所有者の相続人であること等を期限内(3年以内)に登記官(不動産を管轄する法務局)に申し出ることで、義務を履行することができます。登記官は、所要の審査をした上で、申出をした相続人の氏名・住所等を職権で登記に付記します。

手続の基本的な流れは相続登記の申請と同様ですが、以下のような特徴があります。


○ 特定の相続人が単独で申出可(他の相続人の分も含めた代理申出も可)

○ 申出手続(オンラインでも可)において、押印・電子署名は不要

○ 法定相続人の範囲・法定相続分の割合の確定が不要(提出書類も少ない)

○ 登録免許税は非課税


相続人申告登記は、期限内に相続登記の手続きが難しい場合は、その申請をしなければなりませんが、所有者を公示するものではありませんので、不動産を売却等処分する場合は、遺産分割協議を成立させるか法定相続で、相続登記の申請をしなければなりません。

次回は、相続登記懈怠の場合の過料についてご説明します。



判例紹介


不法行為に基づく損害賠償請求事件

最一小判令和2年7月9日


【事実の概要】


Xは、自動車事故により後遺障害が残り、労働能力を喪失したため、加害車両の運転手、加害車両保有者、保険会社に対し、不法行為に基づき、逸失利益、介護費用、慰謝料等の損害賠償を求める訴えを提起した。その際、Xは、後遺障害逸失利益について、定期金賠償を求めていた。第一審、控訴審ともに、後遺障害逸失利益につき、Xの就労可能期間を終期とする定期金による賠償を認めた。これに対し、運転手らは、定期金による賠償は、賠償すべき時期が被害者の死亡により終了する性質の債権についてのみ認められるべきであるのに、定期金の賠償を認めた上、就労可能期間より前の被害者の死亡を定期金の終期とせずに、就労可能期間の終期までの間にXが取得すべき収入額につき定期金の賠償を命じた原審の判断には法令解釈の誤りがある旨を主張し、上告受理申立てをした。


【判旨】


最高裁は、不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らすと、交通事故に起因する後遺障害による逸失利益という損害につき、将来において取得すべき利益の喪失が現実化する都度これに対応する時期にこの利益に対応する定期金の支払いをさせるとともに、算定した損害額と現実化した損害金の間のかい離が生ずる場合には民訴法117条によりその是正を図ることができるようにすることが相当と認められる場合があるというべきであり、本件の事情によれば定期金賠償によることが相当であるとして、上告を棄却した。

*民事訴訟法117条1項


口頭弁論終結前に生じた損害につき定期金による賠償を命じた確定判決について、口頭弁論終結後に、後遺障害の程度、賃金水準、その他の損害額の算定の基礎となった事情に著しい変更が生じた場合には、その判決の変更を求める訴えを提起することができる。ただし、その訴えの提起の日以後に支払期限が到来する定期金に係る部分に限る。


【コメント】


交通事故被害による損害には、被害者が事故のために支出した治療費、入院費、交通費等の積極損害と、事故がなければ被害者が得られたであろう利益を得られなかったことによる消極損害があります。民法は、損害賠償金がどのような方法で支払われるべきかに関する規定を置いていません。

しかし、ほとんどの場合、原告は一時金での支払いを請求しており、裁判所も一時金請求を認めています。また、判例は被害者が一時金による賠償を求めている場合に、定期金による支払いを命じる判決をすることはできないとしています。(最判昭和62・2・6)そして、人身侵害により被害者に生じた後遺障害逸失利益のような消極損害の賠償が問題となる場面で、本件のように被害者から定期金による支払いが求めれることがあります。ここで問題となるのが、被害者が定期金賠償を選択したときに、加害者が一時金にせよといえるかということがあります。

この点に関して、最高裁は、定期金賠償を命じることができるとし、民事訴訟法117条による損害額の是正を含め、被害者が被った不利益を補填して不法行為がなかったときの状態を回復させるという不法行為損害賠償制度の目的・理念を重視し、被害者の選択に基づく支払い方法を尊重しています。本件からも、賠償の方法として、一時金賠償とするか、定期金賠償とするかにおいて、被害者がイニシアティブを握っていることが分かります。とはいえ、将来の加害者の資力や加害者の誠実な履行等の不安が伴う定期金賠償を選択するか、中間利息が控除され、将来の逸失利益を十分に得られない可能性がある一時金賠償を選択するか、被害者にとって容易には決め難い問題が残ります。



司法書士日記


私は、主に司法書士、弁護士、税理士が会員となっている団体である「民事信託推進センター」の会員であり、その中でも、会員の研修にまつわる企画・準備等を行う委員会に

所属しています。定期的にその委員会のリモート会議が行われ、全国各地の司法書士と話をする機会が設けられています。それぞれの地域での民事信託の利用状況や利用に

おける課題などを話し合うことで、情報を収集することができ、また、各地で活動している同じ司法書士と話をすることは、自身の仕事の振り返りにもなり、とてもよい刺激になっています。

同じ司法書士同士で悩みを共有したり、励まし合ったりする仲間が全国にいることはとても心強く、それぞれの地元において活動している同士を思い浮かべながら、私も少しで

も地元の役に立てるようにさらに研鑽していきます。


(健軍事務所司法書士 山﨑順子)






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