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法エールV ol.175

薄場事務所 井上史織

2023年8月20日

不動産登記関係改正点② 裁判例紹介|盗取されたキャッシュカード コラム―いつもの夏―


ご挨拶

弊法人の健軍事務所が移転しました。新しい事務所は、これまでの事務所から車で10分ほ

どのところにあります。新しい事務所の住所は、熊本市東区健軍本町22番2号(101)で

す。陸上自衛隊健軍駐屯地の正門を県庁に向かって、左側の建物(ビル名:アイユート健軍本

町)です。

健軍事務所は、弊法人の3番目の事務所として平成19年に新設しました。山﨑順子司法書

士を所長として、これまで成年後見や登記関係、裁判事務等、様々なご相談に対応し、事務所

新設から順調に運営していました。しかし、平成28年4月に熊本地震が起こり、健軍事務所

が入居していたビルは、大規模半壊の認定を受けました。そのため、そのビルの1階にあった

事務所を移転しなければなりませんでしたが、熊本地震の影響で多くの建物が被害を受けてお

り、移転先が見つかるか不安がありました。幸い、知り合いの方から、理容室の入っている近

くの建物の3階が空いているとご紹介いただき、そちらに移転することができました。

2、3年くらい経てば、熊本地震の影響も収まり、1階店舗の空室がでてくるかと考えてお

りましたが、なかなか希望する移転先が見つかりませんでした。しかし、今回も知人のご紹介

により、熊本地震から7年経ち、ようやく今年の7月に移転することができました。

健軍事務所は、成年後見等、高齢者の方のご相談を多く受けている事務所ですので、移転後

は建物の1階ということもあり、高齢者の方からの相談も安心してお受けできる体制が整いま

した。このような高齢者の方に関するご相談がありましたら、ぜひ、お気軽にお立ち寄りくだ

さい。

皆様のおかげをもちまして、弊法人の提供する法的サービスも少しずつ進化しております。

あらためて感謝申しあげます。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。


(代表社員 井上勉)




~不動産登記関係改正点②~


不動産の所有権の登記名義人の住所(本店)や氏名(商号)などに変更があった場合は、管轄の法務局で住所等の変更登記をする必要があります。

不動産登記法の改正によりこの住所等の変更登記申請が、令和8年4月1日より義務化されることになりました。

住所等の変更登記をしないと罰則を科される恐れもあるため、制度内容を理解しておくことが大切です。今回は、住所等の変更登記申請義務化の注意点について解説します。

令和8年4月1日以降、所有権の登記名義人が、住所(本店)や氏名(商号)が変更した日から2年以内にその旨の登記を申請することが義務付けられます。

ここで注意しなければならないのは、令和8年4月1日より前に住所(本店)や氏名(商号)の変更があった場合も、住所等の変更登記の申請義務化の対象になるという点です。この場合、施行日から2年間(令和10年3月31日まで)が住所等の変更登記の申請義務期限になります。

例えば、令和5年8月1日に所有権の登記名義人の住所が変更になったとします。このような場合、令和10年3月31日までに住所の変更登記の申請をしなければなりません。

この住所等の変更登記の申請義務に正当な理由なく違反した場合、その者に対して5万円以下の過料に処されることになります。なお、正当な事由としては、重い病気などで申請ができなかったり、DV被害者等で最新の住所を公示されることに支障がある場合などが挙げられます。

なお、住所等の変更登記の手続の簡素化・合理化を図る観点から、法務局が他の公的機関から取得した情報に基づき、法務局が職権で住所等の変更登記を行う制度も設けられました。

ただし、所有者が自然人(個人)の場合、その所有者が住基ネットへの照会に必要な生年月日等の情報を、法務局にあらかじめ提供する必要があります(検索用情報の申出といいます)。

また、住所等の変更登記が法務局の職権でされるのは、本人の了解が得られた場合に限ります。

これらの制度により、所有者不明不動産が発生することを防ぐことが期待されます。



裁判例紹介

盗取されたキャッシュカードによって預金が払い戻された事案で、

預金者に重過失があるとして請求が棄却された事例

(東京地方裁判所令和3年2月19日判決)


≪事案の概要≫


X(80歳代)は、息子家族とマンションに居住していた。Xは、2019年2月中旬の午後1時頃、自宅で1人で過ごしていたところ、警察官を名乗るC1からの電話を受け、偽造されたXのキャッシュカードで預金が引き出されたため、キャッシュカードを調べるために金融機関名、口座番号、暗証番号を教えるよう告げられた。そこでXは、C1に対してY銀行及び口座番号、そしてカードの暗証番号を知らせた。



同日午後3時頃、Xが自宅で1人で過ごしていたところ、警察官を名乗るC2から自宅の玄関先で封筒を差し出され、Y銀行のカードを封入して封筒に保管しておくよう告げられ、カードを当該封筒に入れた。するとXは、C2から封筒に捺印するよう告げられたため、玄関先にカードの入った封筒を置いたまま、印鑑を取りに行くために玄関を離れ、自宅の居室に赴いた。その隙に、C2により、当該封筒を小売店のポイントカードが入った別の封筒にすり替えられてY銀行のカードを盗取された。

同日から翌日にかけて、何者かによって、カードを用いてXのY銀行の口座から約200万円がATMで払い戻された。

翌日の正午頃、XはY銀行からの電話で大金が支払われているが心当たりがあるか尋ねられた。

Xは、引き出した覚えがない旨回答した。XはY銀行の社員らの来訪を受け、警察に被害届を提出するとともに、Y銀行の求めに応じてカードの盗取に関する状況について説明するなどした。

その後、Xが預金者保護法5条1項に基づいて前述の払戻額全額の補てん金請求をしたところ、Y銀行は同条3項1号イ(預金者に重過失がある場合)に該当するとして支払いを拒否した。

そこでXは、Y銀行に対し、重過失ではなく過失を適用するのが相当だとして、払い戻された預金額の4分の3に相当する約150万円およびこれに対する遅延損害金の支払いを求めて提訴した。


≪裁判所の判断≫


請求棄却。


預金者保護法は、預金者の「故意」または「重大な過失」がある場合には金融機関に補てん義務を課していない。この「重大な過失」は具体的には預金者が暗証番号の管理に関して①他人に暗証番号を知らせた場合②暗証番号をキャッシュカード上に書き記した場合③自らキャッシュカードを安易に第三者に渡した場合、そしてこれらと同等程度以上に注意義務違反が著しい場合と解されている。預貯金者において、真正カード等の管理、暗証番号の管理等に関し、通常人に要求される程度の相当な注意をしないでも、わずかの注意さえすれば、自らの預貯金等契約にかかる預金口座からATMでの払戻しが行われる結果をたやすく予見することができた場合であるのに、漫然とこれを見過ごしたような、故意と同視し得る著しい注意欠如の状態をいうものと解される。

本件においては、XはY銀行の口座番号やカードの暗証番号を知らせたり、玄関先にY銀行のカードの入った封筒を置いたままその場を離れるなどの行為認められるため、このような暗証番号やキャッシュカードの管理は、著しい注意欠如の状態、すなわち「重大な過失」が認められるとして、Xの請求を認めなかった。


≪コメント≫


「偽造カード等及び盗難カード等を用いて行われる不正な機械式預貯金払戻し等からの預貯金者の保護等に関する法律」(いわゆる「預金者保護法」)においては、真正カードが盗難されてATMで払戻しがなされた際、金融機関に対し、一定の要件を充たせは全額、預貯金者に過失があった場合でも4分の3の補填を求めることができます。しかし、重過失がある場合には補填を求めることができないとされています。本事例においては、Xに重過失があったと認定されましたが、特殊詐欺という事情において80歳代の高齢者に重過失があったとの判断には疑問が残ります。いずれにせよ、暗証番号、キャッシュカードの管理は厳重に行うことの注意をさらに促していきたいと思います。




コラム


―いつもの夏―



行動制限のない夏が3 年ぶりに訪れ、ニュース等を見ていても、いつもの夏が帰ってきたと花火を見た人たちの声が聞こえてきます。

4 才の我が子にとっては、赤ちゃんを卒業した頃にはw it h コロナでしたので、いつもの夏とは初めてのこととなりました。いつもの夏となっては、毎週のように花火大会があり、夏祭りもあちらこちらで開催され、どこに行こう… とうれしい悩みもあり、こんなに祭りってあったんだなとしみじみ、感動に浸ってしまいます。

とは言え、新型コロナはなくなったわけではありません。症状がある場合は外出を控える等気をつけて行動していきたいと思います。

来年の夏はどのようになっているか分からないと思うと、この夏の楽しいひとときに、ありがたさを感じてしかたありません。子どもたちにも、今しかできないことをして夏をしっかりと満喫し、楽しい思い出をたくさん作って成長していってほしいなと思っています。


(薄場事務所 井上史織)



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