
小山 愼一郎
2025年9月20日
成年後見制度の見直しに向けた検討 / 判例紹介 :会社の政治献金 / 司法書士日記
ご挨拶
令和7年8月、熊本県は記録的な豪雨に見舞われ、各地で河川の氾濫や土砂災害が発生しました。
多くの方が被害に遭われ、被害に遭われた皆様には、心よりお見舞いを申し上げます。
私の周りでも、お店が床上浸水で数日営業できなかったり、車が浸水したり、マンションのエレベーターが、浸水により故障して動かなくなったりと、いろいろと被害が出ております。
このような豪雨災害は、以前はあまりなかったように感じますが、最近、日本において増加傾向にあるということです。
その主な原因は、地球温暖化や異常気象の影響により大気中の水蒸気量が増加し、短時間に大量の雨が降る「線状降水帯」の発生が頻発しているからだとのことです。
さらに、都市部の過密な開発や河川・排水設備の老朽化、山林の伐採による保水力の低下など、人為的要因も被害を拡大させているとのことです。
対策としては、堤防の強化や調整池の整備、下水道の拡充などインフラの耐久性を高めること、森林保全や治山治水事業を通じて自然の保水機能を回復させることがあげられております。
また、ハザードマップの周知や災害情報のリアルタイム発信により、住民が早期に行動できる体制を整えることが必要だということです。
これまでの常識では考えられないことが、今後も起こり得ると考えると、上記の対策を早期に行う必要があると思います。
当法人におきましては、法律相談、不動産の登記手続(改築に伴う建物の登記、相続登記等)、債務整理等、被災された方の法的な支援ができればと考えております。
微力ではございますが、何かございましたら、ご相談ください。
それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。
代表社員 井上 勉
成年後見制度の見直しに向けた検討
これまで、2回にわたり、民法(成年後見等関係)等の改正に関する中間試案(以下、「中間試案」といいます。)について説明しています。
今回は、この中間試案で示された任意後見制度の検討事項について説明します。
任意後見制度は、成年後見制度の一つですが、その利用促進と柔軟性の確保を目的とした見直しが検討されています。
現行の任意後見制度は、本人が十分な判断能力を有している間に、将来に備えて、支援をしてもらう人(任意後見人)及び支援をしてもらう内容を定めた契約を結びます。
そして、判断能力が不十分となった際に、任意後見監督人の選任によって効力が発生する仕組みです。
しかし、実際には、制度が複雑で理解しづらかったり、任意後見監督人に対する報告の負担や、任意後見人の報酬に加えて任意後見監督人の報酬も発生するなど、負担感が大きいことなどから、利用件数は伸び悩んでいるのが現状です。
中間試案では、これらの課題を解消するために、任意後見監督人の選任や監督の在り方を見直し、報告や報酬等の過度な負担を軽減しつつ、必要な監督機能を確保することや、任意後見制度と法定後見制度を併存させること、任意後見契約で定めた内容の一部解除や事務の追加、予備的な任意後見受任者(将来の任意後見人)を定めることなどが検討されています。
1.任意後見監督の在り方
現行では、任意後見契約を発効させるには、家庭裁判所による任意後見監督人の選任が必要です。
任意後見人は本人のために行った事務を任意後見監督人に報告し、任意後見監督人は任意後見人が行った事務や任意後見監督人が行った監督の内容を家庭裁判所に報告します。
この点ににつき、この制度を維持するか、必ずしも任意後見監督人を置かずに、家庭裁判所の判断により、家庭裁判所が直接任意後見人の事務を監督するか、引き続き検討されることとなりました。
2.任意後見制度と法定後見制度の併用
現行では、任意後見人と法定後見人の権限の重複を避けるため、任意後見人と法定後見人は同時には選任できない規定となっています。
この点につき、現行の制度を維持するのか、本人の意思で締結した任意後見契約を維持しつつ、法定後見との重複を認め、相当と認めるときには任意後見人の権限を停止する等といった規律を設けることとするのかについて、引き続き検討されることとなりました。
3.その他の検討事項
その他にも、契約締結の方法として現行の公正証書の方式を維持するのか、契約の一部解除や事務の一部追加する方法を設けるか、予備的に任意後見受任者を設けることができるかなどといった検討事項が示されました。しかし、いずれも引き続き検討されるにとどまり、今回の中間試案においては、具体的な改正の方向性は示されませんでした。
以上、これまで3回にわたり、中間試案の内容について説明しました。この中間試案については、各団体等からパブリックコメントが提出されており、その内容を受けて法律の改正へと進んでいく予定です。
成年後見制度がより利用しやすい制度となるよう、法律の改正が待たれます。
判例紹介
会社の政治献金
(最高裁判所昭和45年6月24日大法廷判決)
【事実の概要】
昭和35年(1960年)に、八幡製鉄株式会社の代表取締役Yらは、同社を代表して、自由民主党に対して、350万円の政治献金を行った。この行為について、同社の株主Xが、当該政治献金としての寄附は、同社の定款で定めた事業目的の範囲外の行為であり、かつ、当時の商法に基づいて取締役に課される忠実義務に違反するものであるとして、Yらに対して同社に350万円と遅延損害金の支払いを求める株主代表訴訟を提起した。
第一審は、会社が非取引行為として寄附することは、会社の営利目的に反するので、原則として認められないとし、例外的に、一般社会人としての合理的意思によれば総株主の同意が期待できるような社会的義務行為としての寄附のみ許されると判断した。350万円の政治献金はこの例外に該当しないとして、Xの請求を認めた。このため、会社は控訴した。
控訴審では、会社は「独立の社会的存在」であるため、定款の事業目的に関わらず、社会的に有用な行為を行うことができるとし、また、政党が公共の利益に奉仕する存在であるとし、会社が政党へ政治資金を寄附する能力を認めた。また、会社が政党へ政治献金することにより、国民の参政権に影響を及ぼすことはないとも判断した。
そのため、第一審を取り消して、Xの請求を棄却。そこで、Xが上告した。
【判旨】
上告を棄却する。
第1 「法人の基本的人権」について
憲法第三章に定める国民の権利および義務の各条項は、性質上可能なかぎり、内国の法人にも適用されるものと解すべきである
第2 会社等の「法人の政治的活動の自由(参政権)」について
会社は、自然人と同様に納税義務を果たしているため、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有するのであり、政治資金の寄附もまさにその自由の一環である。
第3 法人の目的の範囲について
会社の活動の重点は、定款所定の目的を遂行するうえで直接必要な行為に存する。ただ、定款所定の目的にかかわりがない行為でも、社会通念上、会社に期待される行為は会社も当然なしうる。
例えば、災害救援資金の寄附、地域社会への財産上の奉仕、各種福祉事業への資金面での協力などの会社が社会的役割を果たすために相当な程度のかかる出捐をすることがこれに当たる。
こうした行為は株主その他の会社の構成員の予測に反するものではなく、なんら株主等の利益を害するおそれはないので、会社の権利能力の範囲内にあると解することができる。
この理は、会社が政党に政治資金を寄附する場合においても適用できる。
【コメント】
上記判決は、法人(会社)は国民と同様に政治的行為をなす自由を有し、政治的行為である政党への政治資金の寄附は、社会通念上会社に期待される行為であり、会社の権利能力の範囲内にあるとの理由で、会社
や法人の政党への政治献金を認めました。ただ、この献金を無制限に認めると、個人、企業・団体と政党との癒着や政治の公平性を損ね、政治の腐敗につながる恐れがあります。
そこで、この政治献金のやりとりに関し、「公職選挙法」や「政治資金規正法」により、政治資金収支報告書の提出や、献金の対象を政党・政党の支部・政治資金団体に限定したり、個人から政党・政治資金団体
への献金の上限は年間2,000万円、会社・労働組合からの献金の場合は資本金の額や組合員数等に応じて年間750万円から1億円までとする限度額の設定などのルールを定めています。
しかし、昨今の「政治と金」の問題に象徴されるように、未だに政治の透明性と公平性が確保されるには至っていません。
政党は、議会制民主政治の下で、有権者の多様な意見や価値観を集約し、政策として具体化するという重要な役割を担い、政党に所属する各議員も同様の役割を果たす職責があります。
そして、私たち国民一人ひとりも、民主政治の担い手の一人として、政党や所属議員の活動を不断に監視、批判して、民主主義を成熟させる責務を負っていると思います。
司法書士日記
業務は、登記、供託及び訴訟等の文書作成及びその手続きを致します。
上記の仕事を受託し、進行するには、本人確認及び意思確認等が必要です。
そのために、依頼者と面談等を行い、意思の確認等をします。
いわゆる、人、物、意思の確認を致します。
人とは、当事者の確認であり、物とは不動産であれば登記簿に記載のある土地等であり、意思とは所有権を移転するのか、抵当権を設定するのか等であり、訴訟であれば調停申立なのか、訴訟提起なのかであります。
現在では、本人確認をするのに、運転免許証等の提示を求めても応じてくれますが、以前に不動産の仲介業者(宅地建物取引業者)から「自分が本人は確認しているから司法書士が本人確認することはない。」と言われたことがありました。「貴方の確認と私の確認とは、異なるものである。当事者の意思確認等をさせてもらいます。」と言って、上記の人、物、意思の確認をしたことがありました。
当事者の確認、物の確認及び意思確認をしなければ、本人の権利の擁護になりませんので、これらに留意しながら仕事を受託し、業務を遂行しております。
(清水事務所 司法書士 小山 愼一郎)
~寄り添う支援で笑顔ふたたび~
当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222
FAX 096-341-8333
命の絆・大切に、輝く命・永遠に
当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
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