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法エールVol.181

龍田事務所 山田祐喜

2024年2月20日

民事信託 判例紹介 コラム



ご挨拶


本年1月1日に発生した能登半島地震から2カ月が経ちました。亡くなられた方に哀悼の意を表し、また、被災された方に心よりお見舞い申し上げます。被害の状況が少しずつ明らかになっておりますが、2月20日時点で241名の方が地震でお亡くなりになっており、心が痛みます。熊本地震では、276名の方がお亡くなりになられましたが、そのうち、災害関連死が221名おられ、多くの方が地震後に環境の変化等でお亡くなりになっています。能登半島地震では、今後、災害関連死が増えないことを祈念しております。

先日、私が所属している経営者の団体の石川県所属の会員の方とお話をさせていただきました。その会員の方の話によると、その団体は金沢市内の会社が多く、被害はあまりなかったということですが、輪島市や珠洲市等の地域では建物等の倒壊が多く、被害は甚大であるということでした。石川の会員の方は、少しでも被災された地域の方のお役に立ちたいということで、熊本地震の経験を踏まえて、意見等を頂きたいということでした。熊本の会員は、熊本地震の際に、全国の方から多額の寄付をいただき、それを熊本城や阿蘇神社の復興や子供の教育関連に寄附させていただきましたので、その経緯等をお話しさせていただきました。

熊本は、熊本地震を乗り越え、復興を遂げています。今回の能登半島地震で被災された皆様は、本当に大変だと思います。こちらでも支援できるところは支援させていただき、一日でも早く復興されることを祈っております。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。


(代表社員井上勉)



民事信託


前回は、将来における財産管理の方法の一つとして「任意後見制度」について説明しました。

今回は近年問い合わせが多くなっている「民事信託」について説明します。

民事信託とは、ある特定の財産を自分自身(委託者)が、自分の財産を信頼できる人(受託者)に託して名義を移転し、信託契約で定めた一定の目的(信託目的)に従って、利益を享受する人(受益者)のために、管理、活用、承継することをいいます。受託者は受益者に信託財産を利用させたり、運用益などを給付したりして、信託目的達成のために活動することになります。



民事信託の利用方法としては、①信託契約による方法、②遺言による方法、③自己信託(信託宣言)による方法、がありますが、ほとんどのケースは①が利用されることが多いです。たとえば、アパート経営をしている父親が将来の認知症に備えて、子どもとの間で信託契約を結び、子どもにアパートを信託します。このとき、受益者も父親としておけば、アパートから発生する賃料収入は引き続き父親のものとすることが可能です。万が一父親が認知症になってしまった場合でも、アパートの名義は子供に移っているので、大規模修繕や建て替えなどは子どもが手続きを行うことができます。

この例のように、委託者と受益者が同一人である限りは、贈与税や不動産取得税の課税の問題は出てきません。また、最終的には財産そのものを相続人等の財産を残したい人に承継させることは可能ですので、遺言の代わりに①の方法を利用することもできます。

また、認知症対策だけではなく、いわゆる「後継ぎ遺贈型の受益者連続信託」といって、不動産などの財産を、あらかじめ決めた人に、複数世代にわたって承継させることができる信託もあります。

例えば、上記の例で、アパートについて、委託者兼当初受益者を父親とし、受託者を長男として、父親が健在の間は父親が受益者としてその賃料収入を受け取ることとします。その後、父親が亡くなった際は、第2受益者として母親を定めておき、アパートの賃料収入は母親が受け取ることができるようにします。さらに、母親が亡くなった際は、その次に定めた受益者(例えば障がいのある二男等)とすることで、長期にわたる財産上の利益の承継先を決めることもできます。

民事信託は、それぞれの親族関係や財産に応じた契約内容を検討することになります。また、契約の内容によっては税金が課せられることもあり、専門家を交えた慎重な検討が必要です。




判例紹介


本訴と反訴の係属中になされた本訴請求債権を自動債権とし、反訴請求権を受動債権とする相殺の抗弁と民事訴訟法142条

(令和2年9月11日最高裁判所第二小法廷判決)



【事実の概要】


Yは、建築物の設計、施工等を営むXとの間で、請負代金額を750万円として自宅建物の増築工事の請負契約を締結した。その後、Xは、完成した自宅建物の増築部分をYに引き渡した。しかし、上記増築部分には瑕疵(本来あるべき品質・性能が備わっていない又は契約で予定した品質・性能を有しないこと)が存在し、これによりYは損害を被った。

XはYに対して請負代金を請求する本訴を提起し、Yは、瑕疵修補に代わる損害賠償を請求する反訴を提起した。

Xは、第1審口頭弁論期日において、Yに対し、本訴請求に係る請負代金債権を自動債権とし、反訴請求に係る瑕疵修補に代わる損害賠償債権を受動債権として、対当額で相殺する旨の意思表示をし、これを反訴請求についての抗弁として主張した。

原審は、本件相殺の抗弁について、重複起訴を禁じた民事訴訟法142条の趣旨に反し、許されないとした。

※本件は令和2年4月の改正民法が適用される以前の事例です。


【判旨】


瑕疵ある目的物の引渡しを受けた注文者が、請負人に対して取得する瑕疵修補に代わる損害賠償債権は、実質的、経済的には、請負代金を減額し、請負契約の当事者が相互に負う義務につき、その間に等価関係をもたらす機能を有するものであるため、相殺を認めても、相手方に不利益を与えることはなく、むしろ、相殺による清算的調整を図ることが当事者双方の便宜と公平にかない、法律関係を簡明にするものであるといえる。

本訴と反訴の弁論を分離すると、本訴請求債権の存否等に係る判断に矛盾抵触が生ずるおそれがあり、また、審理の重複によって訴訟上の不経済が生ずるため、このようなときには、両者の弁論を分離することは許されないというべきである。そして、本訴及び反訴が併合して審理判断される限り、上記相殺の抗弁を主張することは、重複起訴を禁じた民事訴訟法142条の趣旨に反するものとはいえないとして、相殺の抗弁を主張することは許される。

(重複する訴えの提起の禁止)

民事訴訟法第142条


裁判所に係属する事件については、当事者は、更に訴えを提起することができない。


【コメント】


民事訴訟法には、前の確定裁判でその目的とした事項に関する判断につき、当事者は後の裁判で別途争うことができず、別の裁判所も前の裁判の判断内容に拘束されるという効力、すなわち前の裁判における判断内容の後の裁判への拘束力があり、このことを「既判力」といいます。

民事訴訟法142条の趣旨は、(1)既判力の生じる判断の矛盾抵触を防止すること、(2)訴訟経済(訴訟に関する裁判所、当事者等の労力・出費をできるだけ少なくするという訴訟制度上の要請)、(3)被告の応訴の負担を軽減することです。

相殺の抗弁は訴えの提起そのものではありませんが、相殺の抗弁には既判力が生じるため(民事訴訟法114条2項)、自働債権の存否について矛盾した判断がなされると既判力の抵触の恐れが生じるとして、民事訴訟法142条が類推適用されるのではないかが問題となります。

本判決は、「本訴請求債権を反訴請求に対する相殺の抗弁に供する場合」において、本訴及び反訴が併合して審理判断され、相殺による清算的調整を図るべき要請が強く働く場面に限定されることになると思われます。



コラム


先日、新しい眼鏡を買いに行きました。ひと昔前まで、眼鏡はなかなかの値段で、頻繁に新しいものを買うことはできませんでしたが、今はお手頃な価格で買え、ありがたい限りです。以前より随分安くなったとはいえ、買うとなれば、毎日使うものでもありますし、できるだけ自分に合ったものを買いたいと思うのが人情だと思います。そして、眼鏡を選ぶ時、いつも疑問に思うことがあります。みなさんはどうやって眼鏡を選んでいるのでしょうか。

眼鏡を選ぶとき、店に並べてある眼鏡をかけてみて、どれが自分に似合うか鏡を見て確認しようとしますが、その眼鏡のレンズはもちろん度が入っていませんので、ほとんど何も見えず確認できません。確かに、店内の鏡にへばりついて見れば見えないこともないのですが、中年男性がショッピングモールで鏡にへばりついて自分の顔を確認している姿は、客観的に見てただ事ではありません。スマホを利用して自撮りで確認するという手もありそうですが、中年男性が何度も自撮りして、唸りながら首をひねっていたりしたら・・・私の周りだけ人のいない空間ができそうです。考えすぎでしょうか。

結局、妻に似合うかどうか見てもらって、妻の選んだものを言われるがまま買い、度の入った新しい眼鏡ができて初めて自分で確認できるといった次第です。自分で似合っていると思っていても、他の人の認識は違うことなんてことは往々にしてあるから・・・と無理矢理自分を納得させていますが、次は何か良い方法を見つけて自分で選びたいとの希望を捨て切れずにいます。


龍田事務所 山田祐喜



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