龍田事務所 伊藤峰治
2023年6月20日
所在不明株式問題③ 判例紹介|マイナンバー制度と「私生活上の自由」 コラム―大塚国際美術館―
ご挨拶
半導体の受託生産で世界最大手のTSMCが熊本に工場を建設していますが、先日、第2工場も熊本で建設されるかもしれないという情報が流れました。
TSMCが第1工場を建設している現在、菊陽町周辺は、道路整備や集合住宅の建設等、大きな動きが起こっています。土地の値段は急騰し、第2工場が建設されれば、さらに値段は上がっていくものと思われます。
企業におきましても、TSMC関連の企業が熊本に進出しており、地元企業の人材が、そちらに流れていっているようです。地元企業は、賃金を見直したりと試行錯誤されています。
このように半導体生産最大手のTSMCが熊本にくることにより、様々な影響がでてきています。経済効果も非常に大きいです。しかし、1980年代は、日本が世界一の半導体生産の技術を持っていました。これが、数十年で、韓国や台湾の企業に追い越されました。日本の半
導体産業とTSMCとの差は何だったのかと感じます。
また、海外の方が、熊本の不動産や会社を買いたいと、不動産会社や銀行等に問い合わせが多数あるということです。これは、日本の不動産や会社を割安に感じているからなのかもしれません。
失われた30年といわれますが、日本の技術力が低下し、国力が衰える中、熊本の不動産や会社が海外の方に買われる状況をみると、失われた30年とはこういうことなのかと実感します。
半導体だけではなく、その他の産業や農業等も含め、日本のこれからを考えていかなければならないと改めて感じました。
それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。
(代表社員井上勉)
所在不明株式問題③~
前回、前々回と、株主が行方不明等の所在不明株式の問題の解決策について説明してきました。
今回は、その3回目として、具体的解決策が4つある中の、3つ目、4つ目の方法をご説明いた
します。
1.特別支配株主の株式等売渡請求制度
これは、特別支配株主(会社の議決権の9割以上を有する株主)がいる場合、その株主が他
の株主に対して全部の株式を売り渡すように請求できるという制度です。他の株主が行方不明
であっても請求することができます。
手続きは、特別支配株主が株式の取得日や買取代金額等を決めて株式売渡請求をすることを
会社に通知し、会社の承認を得ます。その後、会社が少数株主に対して、株式の取得日の20
日前までに、特別支配株主から売渡請求がされ、会社が承認したことを通知します。この通知
は株主名簿に記載された少数株主の住所に宛てて通知すれば足り、通知が届かないときでも通
常届くべき時期に届いたものとみなされます。特別支配株主は株式の取得日に株式を取得し、
株式買取代金は少数株主の住所を管轄する法務局に供託することになります。
2.株式併合
株式併合とは、複数の株式を少数の株式にまとめて(10株を1株など)、株式の単位を大
きくする行為です。株式併合をすると、1株に満たない端株(はかぶ)が生じますが、端株は
会社法上、会社が強制的に買い取ることができることから、所在不明株主の株式を強制的に買
い取ることができます。
手続きは、まず、株主総会を招集して特別決議により株式併合を決定します。「特別決議」
とは、議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権数の2/3以上の賛成で
可決する決議方法です。その後、株式の併合の効力発生日の20日前までに、全株主に対して、
個別に、併合の割合等を通知する必要があります。連絡がとれない株主については株主名簿に
記載された住所に宛てて通知すれば足り、通知が届かないときでも通常届くべき時期に届いた
ものとみなされます。株式併合の効力が発生した後に、株式併合により発生した端株について、
裁判所に売却許可の申し立てをすることができます。裁判所から売却を許可されれば、会社は
端株を自ら買い取ることができます。買取代金は法務局に供託します。
以上、3回にわたって所有者不明株式問題の解決策についてご説明しました。ご不明な点等
がありましたら、弊法人にお気軽にご相談ください。
判例紹介
マイナンバー制度と「私生活上の自由」
(令和5年3月9日最高裁判所第一小法廷判決)
≪事案の概要≫
行政手続きにおける特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号利用法)によ
り個人番号を付番されたXらは、Y(国)に対し、Yが番号利用法に基づき、Xらの特定個人情報
の収集、保管、利用又は提供をする行為は、憲法13条の保障するプライバシー権を違法に侵害す
るものと主張し、プライバシー権に基づく妨害予防請求又は妨害排除請求として、Xらの個人番号
の削除を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた。
≪裁判所の判断≫
請求棄却。
憲法13条は、国民の私生活上の自由が公権力の行使に対しても保護されるべきことを規定して
いるものであり、個人の私生活上の自由の1つとして、何人も、個人に関する情報をみだりに第三
者に開示又は公表されない自由を有するものと解される。
そこで、行政機関等が番号利用法に基づき特定個人情報の利用、提供等をする行為がXらの上記
自由を侵害するものであるか否かを検討するに、同法は、個人番号等の有する対象者の識別機能を
活用して、情報の管理及び利用の効率化、情報連携の迅速化を実現することにより、行政運営の効
率化、給付と負担の公正性の確保、国民の利便性向上を図ること等を目的とするものであり、正当
な行政目的を有するものということができる。
また、番号利用法は、特定個人情報の提供を原則として禁止し、制限列挙した例外事由に該当す
る場合にのみ、その提供を認めるとともに、上記例外事由に該当する場合を除いて他人に対する個
人番号の提供の求めや特定個人情報の収集又は保管を禁止するほか、必要な範囲を超えた特定個人
情報のファイルの作成を禁止している。
さらに、個人番号はそれ自体では意味のない数字であること、情報提供ネットワークシステムに
おいても特定の個人を識別するための符号として個人番号が用いられていないこと等から、仮に個
人番号が漏洩したとしても、直ちに各行政機関等が分散管理している個人情報が外部に流出するお
それが生じるものではない。
したがって、憲法13条の保障する個人に関する情報をみだりに第三者に開示又は公表されない
自由を侵害するものではないと解するのが相当である。
【憲法第13条】すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の
権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
≪コメント≫
マイナポイント補助金事業の一定の効果として、マイナンバーカードの申請受付数は、人口の約
77%に達しているようです(総務省令和5年6月4日時点)。
しかし、マイナンバーと一体化した保険証に別人の情報が登録されたケースや、公金受取口座を
別人のマイナンバーに登録されたり、マイナンバー活用の住民票写しなどの交付で別人の証明書を
付与したりなど、様々な問題が浮き彫りになってきています。今後の徹底した対策・改善が求めら
れます。
コラム―大塚国際美術館―
大塚国際美術館は、徳島県鳴門市の鳴門の渦潮に近い場所にある美術館です。「世界2 6か国の西洋名が1 0 0 0点・陶板で原寸大で再現・鑑賞ルートは約4キロ・世界の名画に出会える美術館」と美術館のホームページに記載されています。そしてそれは、その記載通りにレオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロ、ゴッホ、フェルメールなどの名画が陶板で再現され展示されています。しかも、原寸大で! 更に展示する展示室自体も原画
とほぼ同じ環境になるように作られている部屋もあります。その中の一つにはバチカンにあるシスティーナ礼拝堂を再現した展示室があり、そこはまさに圧巻の一言です! ! 。
なんて言ってますが、私はまだ悲しいかな行けてないのです。いつか行ってみたいという野望はもっているのですが・・・熊本からのアクセスですと新幹線か飛行機で兵庫又は大阪、そこから高速バスに乗り換えてという流れのようです。
龍田事務所伊藤峰治
__________________________________________________________________________________
~寄り添う支援で笑顔ふたたび~
当法人は、「NPO法人身近な犯罪被害者を支援する会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-341-8222
FAX 096-341-8333
命の絆・大切に、輝く命・永遠に
当法人は、「一般社団法人命の尊厳を考える会」との連携を図っています。
ご質問、ご相談等ございましたら、当法人もしくは下記までご連絡ください。
TEL 096-337-1251
FAX 096-337-3355
当法人では、継続的な相談にも対応できるよう、顧問契約の締結を行っています。
会社・個人問いません。詳しくはお近くの事務所までお気軽にお問い合わせください。
司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター
龍田事務所
〒861-8006
熊本市北区龍田3丁目32番18号
TEL:096-327-9989 FAX:096-327-9799
清水事務所
〒861-8066
熊本市北区清水亀井町16番11号
TEL:096-346-3927 FAX:096-346-4044
薄場事務所
〒861-4131
熊本市南区薄場町46番地薄場合同ビル内
TEL:096-320-5132 FAX:096-357-5710
健軍事務所
〒861-2106
熊本市東区東野1丁目9番1号BOYビル3F
TEL:096-360-3366 FAX:096-360-3355
ホームページアドレスw w w . h s h s c 2 0 0 3 . j p /