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法エールV ol.174

行政書士法人ヒューマン・サポート行政書士 上野庸祐

2023年7月20日

不動産登記関係改正点 判例紹介|自動車の一時使用と不法領得の意思 コラム
―姿を変える大豆―


ご挨拶


日本司法書士会連合会では、司法書士白書という資料を作成しています。司法書士白書をみると、現在の司法書士の事務状況等がよくわかります。不動産登記や商業登記の申請件数や裁判申立件数等が詳細に記載してあります。そのなかで、司法書士の年齢分布が書いてある資料があります。それをみると、20代の司法書士は全体の1.3%となっています。最近、20代の司法書士を熊本で見なくなったと思っていましたが、全国的に減少しているようです。

最近のことですが、若い方に話を聞く機会があり、司法書士試験を目指している人は周りにいますかと尋ねたところ、いないという回答で、司法書士は知っているが、試験が難しくハードルが高いということを話してくれました。司法書士試験の受験者は10年前と比べると全体的に減少しておりますが、若い方の受験も減少傾向にあります。司法書士は、身近な法律の専門家として市民の皆様に頼りになる存在として認知されており、やりがいのある資格ではあるのですが、何故か、その魅力を感じない若者が増えているように感じます。弊法人におきましても、今年の司法書士試験に7名の社員が受験しましたが、最年少が42歳と、全国的な傾向と同様、若い方の受験が減少しております。

未来を担う若い方に法律職である司法書士の魅力を発信し、若い方の受験者数の減少傾向に歯止めをかけるため、弊法人もお手伝いをさせて頂きたいと考えています。皆様のお近くで、法律職に関心がある若者がいらっしゃいましたら、ぜひお声掛けください。弊法人では、司法書士試験に関する勉強会等を実施していますので、その勉強会に参加していただいたり、司法書士の実務を身に付けたいという方は、この参加に加えて、弊法人で我々と共に働いてもらうこともできます。弊法人も微力ながら、司法書士に関心のある若者に対しての支援ができればと思います。

それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。


(代表社員井上勉)



不動産登記関係改正点

近年、土地や建物の相続登記がされないために所有者が不明となった土地や建物が、防災・減災、まちづくりなどの公共事業の妨げになっていることが社会問題となっています。この解決を図るため、法律が改正され、令和6年4月1日から、相続登記が義務化されることは、この法エールでも以前ご紹介させて頂き、ご存じの方も多いかもしれません。

今回からは、その他、令和5年4月1日から施行されている不動産登記等に関する改正点をご紹介致します。


【遺贈による所有権の移転の登記の簡略化】


遺贈とは、遺言によって遺言者の財産を相続人や相続人以外の第三者の方に無償譲与することで、遺言者の死亡によって効力が生じるものです。

法律改正前は、遺贈による所有権移転登記は、被相続人(亡くなった人)の相続人全員(遺言執行者がいるときは遺言執行者)と受遺者(遺贈を受ける人)が共同で所有権移転登記を申請する必要がありました。

そのため、相続人全員の協力が得られず、長い間登記がされずに放置されるケースもありました。そこで、これを簡略化して早期に登記手続きができるように、令和5年4月1日から、相続人に対する遺贈に限り、受遺者が単独で、遺贈による所有権移転登記を申請することができるようになりました。

なお、令和5年4月1日より前に開始した相続により遺贈を受けた受遺者についても、令和5年4月1日からは、単独で所有権移転登記を申請することができるようになります。

さらに、令和6年4月1日からは、この相続人に対する遺贈による所有権登記申請をすることが義務化されることになりますので、注意が必要です。

ご不明な点は、当法人へお気軽にご相談ください。



不動産登記法


第63条

3項遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)による所有権の移転の登記は、第60条の規定(共同申請)にかかわらず、登記権利者が単独で申請することができる。



判例紹介


自動車の一時使用と不法領得の意思

(最高裁判所昭和55年10月30日小法廷決定)



≪事案の概要≫


被告人は、昭和54年12月28日午前零時ころ、広島市東雲本町所在のA給油所駐車場に駐車してあったB所有の普通乗用自動車を、Bに無断で、同日の午前5時30分ころまでには元の場所に戻すつもりで乗り出し、市内を乗り回していたところ、午前4時10分ころ、同市東千田町所在のC石油店前付近の道路において、無免許運転により検挙、起訴された。


≪裁判所の判断≫

弁護人は、窃盗罪の成立を認めた原判断は判例違反及び量刑不当であると主張して上告したが、本決定は、いずれも不適法な主張であると排斥した後、職権により次のような判断を示した。

≪決定要旨≫

被告人は、深夜、広島市内の給油所の駐車場から、他人所有の普通乗用自動車(時価約250万円相当)を、数時間にわたって完全に自己の支配下に置く意図のもとに、所有者に無断で乗り出し、その後4時間余りの間、同市内を乗り廻していたというのであるから、たとえ、使用後に、これを元の場所に戻しておくつもりであったとしても、被告人には右自動車に対する不正領得の意思があったというべきである(補注判例は、「不法領得の意思」を「不正領得の意思」と称している場合が

あります。)。


≪コメント≫


刑法第235条において、「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、十年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。」と規定されています。本事案では窃盗罪の成立を認めています。一方、駅前に止めてあった自転車を通常の用法に従って勝手に1時間持ち出して乗り回した後、元のあった場所に戻すという一時使用のケースの場合は窃盗罪が成立しません。同じく乗り捨てる意思はなく、元の場所に戻すつもりであった事案であるにも拘わらず結論が分かれるのは、「不法領得の意思」があったか否かによります。

この「不法領得の意思」は、窃盗罪の成立に必要な「窃盗の故意(他人の占有侵害及び自己への占有移転の認識)」とは別に、不可罰的な一時使用及び毀棄・隠匿罪と区別するために判例上必要とされる主観的要件です。

判例の伝統的定義によれば、不法領得の意思とは、「権利者を排除して、他人の物を自己の所有物として、その経済的用法に従い、これを利用又は処分する意思」とされています。「権利者排除意思」と「利用・処分意思」の双方が認められて初めて「不法領得の意思」があるということになります。

以上のことを踏まえて本事案を検討しますと、普通乗用車の4時間余りの継続運行の場合は、ハンドル操作の誤りによる車体損傷の恐れやガソリンの費消、タイヤの摩耗も考慮すると、権利者排除の意思が認められますし、また、運行の利益を享受していることから利用・処分の意思も認めることが可能です。このため、本事案では不法領得の意思が認定され、窃盗罪の成立を認めたのではないかと思料されます。一方、通常の用法に従った一時的な自転車使用の場合は、その価格は自動車に比し極めて低廉であり、使用に伴う自転車の価値の消耗は考慮の値しないほど軽微であると解することが可能で、このことを考慮すると、権利者を排除する意思を認定することは困難と思われます。このため、不法領得の意思を欠き、窃盗罪は成立しないことになると解釈することができます。



コラム


―姿を変える大豆―


先日、5 歳の孫と、原材料と食べ物のイラストの描かれたカードを合わせるゲームで遊びました。牛乳とチーズ、お米と煎餅というようにカードを合わせていきます。その中でも大豆は、醤油、豆腐、納豆、味噌の材料であり、様々な姿にかたちを変えていることに改めて感心させられました。大豆を加工した『大豆製品』には、豆乳、きなこ、湯葉、おから、厚揚げ等多数で、味や食感も様々なバリエーションがあり、日本人の食卓には欠かせないものばかりです。我が家でも、大変お世話になっています。以前、私は豆腐作り体験をする機会がありました。一晩水につけた大豆をミキサーにかけ、鍋でゆっくり煮立て、搾った豆乳にニガリを加えて作ります。余熱で数分間置いて固め、出来たての豆腐を、おからと一緒に食べましたが、とても美味しい味わいでした。大豆は畑の肉と呼ばれ、良質なたんぱく質を豊富に含み、脂質、炭水化物、ビタミン類、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどもバランスよく摂ることができます。「姿を変える大豆」のように、普段の食事に出てくるあらゆる食べ物が多くの人たちの手を経て出来上がっており、その大変さとご苦労に感謝の気持ちを実感した一日でした。


行政書士法人ヒューマン・サポート行政書士 上野庸祐

(司法書士法人ヒューマン・サポート法律支援センター連携行政書士)




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