
薄場事務所 井上 史織
2025年8月20日
成年後見制度の見直しに向けた検討 / 判例紹介:代襲相続の可否 / コラム ~時産について~
ご挨拶
先日、農地の相続登記手続きをしたいという方からご相談がありました。
内容をお聞きすると、その農地は、曾祖父の名義のままで、現在相続人が何人いるのかもわからないということでした。
インターネットで相続登記が義務化されたことを知り、不安になって相談にこられたということでした。
その農地は、数十年の間、耕作等はされておらず、草刈りをたまに相談者の方がされているということでした。
このように、相続人が農業を承継せず、農地を耕作していない耕作放棄地が多く存在しています。
令和5年におけるわが国の農地面積は、429.7万ヘクタールで、ピーク時(昭和36年)の608.6万ヘクタールから、60年で178.9万ヘクタール減少しているということです。
農業従事者の数も、平成12年の240万人から令和5年は116万4千人にまで減少しております。
米の値段が高騰しておりますが、その原因のひとつが、農業従事者の減少による米の収穫量の減少にあるといわれています。
先日行われました参議院選挙では、各党が米の高騰についての対策を議論しており、農業従事者への支援等が述べられていました。
これまで当たり前に安く買っていた米が高騰し、米の重要性を日本人が再認識するいい機会になったのではないかと思います。
食糧安全保障は、日本人にとってとても重要な問題ですので、今後この問題は国会でさらに議論されていくものと思います。
当法人も、農地の承継というところで、相続や登記手続きにおきまして、積極的にご相談をお受けし、農家の方への支援ができるように努力して参ります。
それでは、今月の法エールよろしくお願い致します。
代表社員 井上 勉
成年後見制度の見直しに向けた検討
前回より、法務省の法制審議会民法(成年後見等関係)部会において取りまとめられた
「民法等(成年後見等関係)の改正に関する中間試案」(以下、「中間試案」といいます。)の内容について説明しました。
この中間試案については、令和7年8月25日までパブリック・コメントの手続きが実施されています。
今回は、後見人、保佐人、補助人(以下、「後見人等」といいます。)の選任、解任(交代)について説明します。
1.現状
成年後見制度は、認知症などで判断能力が低下している本人の財産や生活を守り、支援することを目的としています。
しかし、現状の成年後見制度は、本人の保護に偏りがちになり、一旦利用が始まると、原則として利用を止めれなかったり、
選任された後見人等を交代させるといったことが柔軟にできない状況にあります。
現在の民法では、誰が後見人になるかについて、本人の意思を重視すべきとの制度にはなっていません。
また、後見人は、正当な理由があれば、裁判所の許可を得て辞任することができますが、後見人が自ら辞任しない場合は、
本人や本人の親族、後見監督人や検察官(以下、「請求権者」といいます。)が、後見人を辞めさせる「解任」の請求を裁判所に対して行うことになります。
また、裁判所が職権により解任することもできます。
しかし、裁判所が解任を認める理由としては、「後見人に不正な行為、著しい不行跡その他後見の任務に適しない事由」があるととされており、
本人が後見人等との相性が良くないなどといった理由で別の者に後見人等になってもらいたいと思っても、認められることはほとんどありませんでした。
2.見直しのポイント
今回の中間試案では、後見人等の選任や、解任(交代)の場面につき、本人を意思や利益を考慮することとする案が提示されました。
(1)後見人等の選任成年後見制度の利用を開始する際や、新たに別の後見人等が選任される際に、本人の意見を重視すべきであることを明確にすることが引き続き検討されることになりました。
(2)後見人等の解任(交代)
現行で定められている解任事由(後見人等の不正な行為や著しい不行跡など)がない場合であっても、本人の利益のために特に必要があると認められる場合には、
請求権者からの請求又は職権により解任ができることを検討すべきという案が示されました。
例えば、本人と後見人等との信頼関係が破綻してしまったり、本人をチームで支援している場合において、専門職が後見人等に選任されているが、
本人の状況の変化等(例えば、専門職の専門性が必要な事務が終了)により、
専門職よりも本人の生活圏内の身近な人(例えば、市民後見人)の方がより本人にとって適切な保護をすることができる場合などが考えられます。
これにより、従来よりも解任(交代)が認められるケースは多くなることが想定されます。
しかし、後見人等を解任されてしまうと、後見人等の欠格事由にあたり、他の人の後見人等になれません。
今後、これらの規定をどのように調整するのかが引き続き検討されることになりそうです。
判例紹介
代襲相続の可否
(令和6年11月12日最高裁判所第三小法廷判決)
【事案の概要】
X1、X2(以下、「Xら」という。)は、母Aとその夫Bとの間に生まれた子である。
被相続人Cは、Xらの祖母(Aの母)の姉Dの子である。Aは、Xらを出産後の平成3年にDと養子縁組をしたことにより、Cの妹となった。
Aは、平成14年に死亡し、その後、Cは平成31年に死亡した。Cには、子、直系尊属及び配偶者がいなかった。
Xらは、民法889条2項において準用する同法887条2項の規定により亡Aを代襲してCの相続人になるとして、Cの遺産である不動産につき、相続を原因とする所有権移転登記申請をした。
管轄法務局の登記官は、不動産登記法25条4号の「申請の権限を有しない者の申請」に当たるとして、登記申請を却下する決定をした。
そのため、Xらは、Y(国)に対して、本件却下決定の取消しを求めた。
第一審は、本件却下決定は適法であるとしてXらの請求を棄却したので、Xらは控訴した。
控訴審は、民法887条2項の規定を準用するに当たっては、同項ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」を「被相続人の傍系卑属でない者」と読み替えるのが相当であり、
Cの傍系卑属であるXらは、Aを代襲してCの相続人になることができるとした上で、本件却下決定は違法であるとして、Xらの請求を認容した。
その後、Yが上告した。
【判決の要旨】
民法887条2項ただし書は、被相続人の兄弟姉妹が被相続人の親の養子である場合に、被相続人との間に養子縁組による血縁関係を生ずることのない養子縁組前の養子の子は、
養子を代襲して相続人となることができない旨を定めたものと解されるから、被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は、
被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人になることができないと解するのが相当である。
本件においては、Xらは、CとAの共通する親であるDの直系卑属ではないから、Aを代襲してCの相続人となることはできない。
よって、控訴を棄却する。
第889条次に掲げる者は、第八百八十七条の規定により相続人となるべき者がない場合には、次に掲げる順序の順位に従って相続人となる。
一被相続人の直系尊属。ただし、親等の異なる者の間では、その近い者を先にする。
二被相続人の兄弟姉妹
2 第887条第2項の規定は、前項第二号の場合について準用する。
第887条被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、
その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
【コメント】
代襲相続とは、相続人となるはずであった者が相続開始以前に死亡・欠格・廃除によって相続権を失った場合に、その者の直系卑属がその者に代わって同一順位で相続人となる制度です。
養子縁組の日より前から既に存在していた養子の直系卑属と養親の間には、養子縁組による親族関係は生じません。
つまり、本件においては、AとDが養子縁組を行う前に存在していたXらは、養親Dの孫(直系卑属)ではないため、代襲相続人に該当しないことになります。
原審では、民法887条2項ただし書の「被相続人の直系卑属でない者」を「被相続人の傍系卑属ではない者」と読み替えて判断しましたが、
最高裁判所は、実子のC及び養子のAの共通の親であるDから見た親族関係で判断し、本件却下決定は適法であるとし、控訴を棄却しました。
令和6年4月1日から相続登記が義務化され、相続に関する相談も増えています。
相続人に該当するかどうかは相続手続きを行う上でとても重要な事柄です。
相続案件に関するご相談は、お近くの司法書士又は当法人へご相談ください。
コラム ~時産について~
少し前のことですが、松任谷由実さんのラジオを聞いていて、「時産」という言葉を紹介されていました。
じたん(時短)じゃないんです、じさん(時産)ですよ… と。
時短というと、効率の良さを求めていかに、同じ時間内に仕事や家事を終わらせるかということになりますが、
時産はスマホをただぼーっと見ている時間等、なくてもよい無駄な行動を省いて、
別の時間を生み出し豊かにしようということだと、その時、話されていました。
まさに言われている通り、なんとなくスマホをつい見ている時間があるなと思います。
そのような時間を省いて、何もしない時間を作るでもいいそうです。
できた時間を使って何をしようと考える時間も素敵ですし、その時間でいつもと違うことが出来たらラッキーな気分になりそうです。
実践してみたいと思います。
薄場事務所 井上 史織
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